《Mana Crypt》の功罪
2016年6月11日 EDH2chとタイムラインで《Mana Crypt》の是非について語られているらしい。
そりゃあ使い出すと使わない理由が無くなってくるように見えてくるんだけど、ここは敢えて身内への逆張りとして《Mana Crypt》を使わないことに対するメリットを考えていきたい。
知らない人はいないと思うけど一応テキスト。
Mana Crypt / 魔力の墓所 (0)
アーティファクト
あなたのアップキープの開始時に、コインを1枚投げる。あなたがコイン投げに負けたなら、魔力の墓所はあなたに3点のダメージを与える。
(T):あなたのマナ・プールに(◇)(◇)を加える。
まず、このカードのメリットから把握していこう。
「0→2へのジャンプアップ」
無から有を生み出す錬金術が出来る。その対価は50%での3点ダメージ。
ライフが通常のゲームとは違って40点あるEDHにおいて、3点ダメージが軽いとみるか遅いとみるかは環境次第だけど、おおむねのイメージとしては楽そうなのでは?
これこそが0マナファクトの真骨頂であり、普通に土地を並べるだけではたどり着けない速度でゲームを進行させることが出来る。「ガチ勢のゲーム展開が速い」と思われる大きな要因はこのカードによる速度の上昇にある。
初手にあれば実質2t分の《時間のねじれ/Time Warp》なので、なるたけ初手に欲しい。
ので、黒や白のチューターを最序盤に撃つと概ねのサーチ先はここになる、ってくらいにはゲーム展開を早める。
そしてEDHというゲームは得てして逃げ切りゲーになりやすい。冒頭の加速からそのまま追いつかれず完走、というパターンはよく見る。
こうならないのは圧倒的な速度に見えて周りが追随出来ていたり、結託してすっころばせるかどうかの状況だろうか。
ということで土地を並べておっきい生物や派手な呪文をぶちまけていくEDHにおいても、このカードがあるだけでそれらのアクションを最低でも2t、そこからつながるマナ加速などを踏まえれば3t以上の加速を見込めるだろう。
ここからが本題。「《Mana Crypt》を理論的な結論として使用しない事由はあるのか」というもの。
まず第一においてデメリットとして書かれている「3点のダメージを受ける」だ。ここを嫌うことに対して考えていく。
先述の通り、EDHは40点のライフを削るゲームである。初手に置いたクリプトがあなたを殺すまでは最速でも14tかかる。もちろんフェッチランドやその他ライフの支払い、対戦相手からの攻撃などを加味しても10tくらいだろうか。それだけのターンを耐え抜く=それだけのターンを経ても勝てないデッキ、という構築が正しいかどうかは読者諸兄に譲る。
第二のデメリットとして「出るマナがCCである」という点。色マナを複数大量に使いたい状況によっては無色マナが出ても何も使い道がない、ということもあり得る。
だが、統率者のルールとして「通常のコストに2を支払えばもっかい出せるよ」というものがあるし、印鑑や各種マナファクトなど、無色マナを使用しない構築、というのは相当練らないと達成できないのではないだろうか。
ので、ここはデメリットとしては一段下がるわけだ。
では、マナが出なくなったとしたらこれらデメリットは更に顕著になるのだろうか。
《無のロッド/Null Rod》《石のような静寂/Stony Silence》が筆頭のアーティファクトメタカードはEDHでも散見されるものであり、うぇいうぇいとアーティファクトを並べた先で置かれると心がしんどくなる。
これらのカードをケアして行動するべきかどうかはさておいて、うぇいうぇいとカードを並べた先がアーティファクトだけ、ということも少ないのではないだろうか。ドローやサーチ、運が良ければ《リスティックの研究/Rhystic Study》や《法の定め/Rule of Law》などの人をイラつかせる置物を設置出来ていたりするだろう。
それに、被害を受けるのはあなた一人ではなく、少なからず他の人々もそれらカードに面倒くささを感じているだろうから、ぬるぽが無くなった時にこそ序盤に得ていたアドバンテージが生きてくる。
ここで先ほど言っていた時間制限の話になるのだが、ぬるぽを14tも維持できるゲームがあるならそれはあなた以外がぬるぽに興味がないデッキであり、即ちアーティファクトヘイトのカード(《オーラの破片/Aura Shards》など)でクリプト自体が吹き飛んでいるかもしれない。
よって、やはりここでもダメージによるデメリットは薄く感じる。
では、実際問題14t以上のターンをかけることが必然であるデッキが存在するのか。
一時期流行った「無にするEDH」というものがある。詳しい説明は省くが、端的に言えばボード壊滅型コントロールデッキである。こういったデッキの場合、最終的な勝利は14tを大きく過ぎることもあるが、その場合盤面には自分も相手もパーマネントが存在していないだろう。即ち、クリプトのダメージが最終的にあなたを殺す刃にはならないだろう。
ロックデッキのタイプはどうだろうか。《永遠王、ブレイゴ/Brago, King Eternal》での《停滞/Stasis》、《育殻組のヴォレル/Vorel of the Hull Clade》での《からみつく鉄線/Tangle Wire》などが顕著であるが、ブレイゴには《ストリオン共鳴体/Strionic Resonator》からの《隕石/Meteorite》による無限ダメージなど、ターンを経ずして勝つ手段も複数持っているというかブレイゴ自身はロックから抜け出せているのでメリットばかりを享受できそうだ。
ヴォレルの場合、構築にもよるがダメージで勝つ手段が少ない。僕自身としてはクリプトを投入しなくても十分である、という考えを持ってはいるが、投入することでまた違った構築を生み出せることも重々承知しているので投入する必要はない、という意見を持つことは無い。
ターンをかけて勝つタイプのデッキでもこういった意見が出るのだ、ターンをかけない普通のデッキなら問題なく投入して大丈夫ではないだろうか。
逆張りしようとしたらどうもメリット面ばかり見えてくる。これは使用しているとやはりその世界が当たり前になってしまうからか。グラブルにおけるヨダ爺みたいなものだと思っていただければ。
では、なぜ使用しない人がいるのか――簡単だ、高いのだ。
カード一枚に対してどれだけの費用を捻出できるか、というのはプレイヤーのお財布事情/そのフォーマットへの取り組み方などで変わるモノだろう。
今までは過去に印刷された少量のプロモカード、という立ち位置から高額レアであることはわかっていた。正直な話、印刷されている枚数はデュアルランドよりも少ないのだから、そこよりも高いカードになりうる可能性はあった。そこは需要と供給の関係で長らく日の目を見なかったが、昨今のEDH熱の高まりによりどんどん高額化していった。
だが、しかし。
今まで供給がなく需要だけが伸びていたところに、とうとう供給が現れたのだ。
その供給量は本当に少量かもしれない。実際の数は多くても出回る数は少ないかもしれない。それでも僕が入手した時よりも明らかに供給は増えているのだ。GP会場で外人トレーダーのファイルを片端から見る、なんてことをしなくてもショップに行けばショーケースに並んでいるんだから。
もしもの話、クリプトが統率者の構築済みに毎年入っていて、高くても1000円くらいで購入出来るならば。今クリプトを使っていない人々はそれでも使用しない、と言えるだろうか。否、であると確信する。
まぁこんな空論に意味はないのだけど、使わない理由が金額であるのなら非常にもったいない、という結論である。
マジックという趣味に、EDHというカジュアルな環境に、そこまでの金額をかけたくない、というのも間違いではない。彼女との逢瀬や友人との旅行、美味しいモノを食べたりガチャ回したりとお金は有限ながら使い道は無限である。
でも。
これから先、EDHを続けていこうと思うのなら、ここを逃して買うタイミングは存在しないのではないだろうか。
人は欲しいと思ったものを必ず手に入れる。遅かれ早かれ絶対に。
そして、後になればなるほど入手し辛くなる。
ここで買わなくてもいずれ入手する。だがそれは買わなかった頃のそれを大きく上回る喪失を引き連れているのだ。
だからこそ。
「いつ買うの? 今でしょ」
結局何が言いたいのかわかんないけど気持ちだけ伝われ。
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